19歳から25年以上投資を続けてきた私が、なぜハイテク株から高配当アメリカ株にシフトしたのか。その理由は意外にもシンプルで、そして少し切実なものでした。ITバブル崩壊やリーマンショックを乗り越え、独立起業を経験した今だからこそ語れる、投資スタイル変更の本当の理由と、実際に得られた結果をお話しします。安定的なキャッシュフローへの切望と、思ったほど甘くなかった現実まで、包み隠さずお伝えします。
19歳でハイテク株に魅了された青春時代
2026年から25年前の2001年、私が19歳だった頃を振り返ると、今とは全く違う投資家でした。その頃の私は完全にハイテク株の虜になっていました。なぜハイテク株だったのか。単純に、周りの大人たちが「これからはIT時代だ」「インターネットが世界を変える」と口々に言っていたからです。今思えば、何の根拠もない流行に乗っただけだったのですが、当時の私には革命的な投資戦略のように思えました。
大学に入学したばかりの私は、アルバイトで貯めた30万円を元手に投資を始めました。最初に買ったのは日本のソフトウェア会社の株でした。社名は今でも覚えていますが、現在はもう存在しない会社です。1株800円で購入したその株は、わずか2週間で1,200円まで上がりました。50%の利益です。19歳の私には魔法のような出来事でした。
「投資ってこんなに簡単なんだ」そう思った私は、次々とハイテク関連株を買い漁るようになりました。インターネット関連、ソフトウェア開発、半導体製造装置メーカー。当時話題になっていた銘柄は片っ端から調べて、気に入ったものはすぐに購入していました。情報源は主にインターネットの掲示板や、投資雑誌でした。今考えると非常に危険な投資手法でしたが、2000年代前半のミニITブームの恩恵を受けて、資産は順調に増えていきました。
大学2年生の終わり頃には、元手の30万円が120万円近くまで膨らんでいました。約4倍です。友人たちがアルバイトで月5万円稼ぐのに苦労している中、私は株式投資で月に20万円、30万円と利益を出していました。調子に乗った私は、アルバイトの時間を減らし、投資の勉強により多くの時間を割くようになりました。
当時の私が特に注目していたのは、アメリカのナスダック市場でした。マイクロソフト、インテル、シスコシステムズといった企業の株価チャートを毎日眺めては、「いつかこういう会社の株を買ってみたい」と夢見ていました。ただ、当時は今ほど海外投資が一般的ではなく、手数料も高かったため、主に日本のハイテク株で我慢していました。
この頃の私の投資哲学は非常にシンプルでした。「成長性の高い会社の株を買って、株価が上がったら売る」。配当なんて二の次で、とにかくキャピタルゲインを狙うことが投資だと信じて疑いませんでした。実際、当時買っていた株の多くは無配当か、配当を出していても雀の涙程度でした。でも気にしませんでした。株価が2倍、3倍になれば、配当なんてどうでも良かったからです。
ITバブル崩壊で味わった絶望と学んだ教訓
2006年のライブドアショック、そして2008年のリーマンショック。この2つの大暴落が、私の投資人生を根底から変えることになりました。特にリーマンショックの衝撃は今でも鮮明に覚えています。
ライブドアショックの時、私はすでに大学を卒業し、不動産営業の仕事に就いていました。投資資金は300万円程度まで増えていましたが、その大部分をハイテク株に集中投資していました。ライブドア本体の株は持っていませんでしたが、関連すると思われていた新興IT企業の株をいくつか保有していました。
2006年1月17日の朝、出社前にニュースを見て愕然としました。ライブドアの強制捜査のニュースが流れていたのです。その日の市場は大混乱でした。私が持っていた株の中で、ある新興IT企業の株は前日比40%安で取引を終えました。一日で120万円の含み損を抱えたのです。
それでも当時の私は楽観的でした。「一時的な調整だ。すぐに戻るはず」そう思って、むしろ追加購入を検討していました。実際、数か月後には株価は多少回復し、「やっぱり買い増ししておけば良かった」と後悔したほどでした。
しかし、本当の試練は2008年に待っていました。リーマンショックです。この時の私の投資資金は500万円を超えていました。不動産営業の仕事も軌道に乗り、投資にもより多くの資金を投入できるようになっていました。そして、相変わらずハイテク株中心のポートフォリオでした。
2008年9月15日、リーマンブラザーズが破綻しました。その週だけで私のポートフォリオは30%近く値下がりしました。でも、最初は「またライブドアショックの時みたいに、時間が経てば戻るだろう」と高をくくっていました。
ところが、下落は止まりませんでした。10月、11月と株価は下がり続けました。私が保有していたある半導体関連企業の株は、9月初旬に1株2,800円だったものが、11月には800円まで下落していました。約70%の下落です。500万円あった資産は、150万円まで目減りしていました。
この時ほど投資の怖さを実感したことはありませんでした。毎朝起きるのが憂鬱で、株価をチェックするのが恐怖でした。本業の不動産営業にも集中できなくなり、上司に「最近元気がないけど大丈夫か」と心配されるほどでした。
2009年の春頃、私はついに一部の株を損切りしました。大学時代からコツコツと積み上げてきた利益が、一瞬で消し飛んだのです。その時の悔しさと悲しさは、今でも忘れることができません。近所のファミリーレストランで、損切りの注文を出した後、一人でコーヒーを飲みながら涙が止まらなかったのを覚えています。
ただ、この経験は私にとって貴重な教訓となりました。まず、集中投資のリスクを身をもって知りました。ハイテク株ばかりに投資していたため、セクター全体が下落した時の損失が甚大だったのです。また、株価の上下に一喜一憂する投資スタイルが、精神的にいかに負担が大きいかも実感しました。
それから数年間、私は投資に対して慎重になりました。損失を取り戻すために無理な投資をするのではなく、まずは投資について基本から勉強し直すことにしたのです。この期間があったからこそ、後に配当投資に興味を持つようになったのだと思います。
30代後半で芽生えた配当への関心
30代後半になった私が高配当株に興味を持ち始めたきっかけは、意外にも職場の先輩の何気ない一言でした。2015年頃、私は医療コンサルタントとして働いていましたが、ある日の昼休みに同僚との雑談の中で投資の話になりました。
その先輩は50代前半で、家族を持つ堅実なタイプの人でした。私が「株式投資をやっている」と話すと、「私も昔はハイテク株とかやってたけど、今は配当目当ての投資に変えたよ」と言いました。「配当って、年に1から2%程度でしょう。株価が2倍になる可能性を考えたら、物足りなくないですか」と私が返すと、先輩は苦笑いしながらこう答えました。
「君はまだ若いからそう思うんだろうけど、株価が2倍になることを期待して投資するのは、実はギャンブルに近いんだよ。でも配当は違う。会社が利益を出し続ける限り、毎年確実にお金が入ってくる。これって実は凄いことなんだ」
当時の私にはピンときませんでしたが、その会話がずっと頭に残っていました。特に印象的だったのは、先輩が「毎年確実にお金が入ってくる」と言った時の表情でした。何か安心しきったような、穏やかな表情だったのです。
その後、私は配当について真剣に調べ始めました。まず驚いたのは、アメリカには配当を25年以上連続で増配している企業がたくさん存在することでした。コカ・コーラは50年以上、P&Gは60年以上連続増配していると知った時は、正直信じられませんでした。日本企業でそんな記録を持つ会社は皆無に等しいからです。
そこで、試しに少額から高配当アメリカ株に投資してみることにしました。最初に買ったのはAT&Tでした。2016年の春頃だったと思います。当時の配当利回りは5%を超えていました。100万円投資すれば、年間5万円以上の配当が得られる計算です。
初めて配当を受け取った時の感動は今でも覚えています。3か月後、証券口座に13,000円程度の配当金が入金されていました。たったの13,000円でしたが、何もしないでお金が増えているという実感は新鮮でした。株価の上下に関係なく、保有しているだけでお金が入ってくる。この安定感は、これまでのキャピタルゲイン狙いの投資では味わったことのない感覚でした。
ただ、最初の頃は完全に配当投資に切り替えたわけではありませんでした。ポートフォリオの20%程度を高配当株にして、残りは相変わらず成長株中心でした。配当投資はあくまで「お試し」程度の位置づけだったのです。
転機が訪れたのは2017年でした。この年、私は会社を退職して独立することを決意しました。医療コンサルタントとして培ったノウハウを活かして、自分のビジネスを立ち上げることにしたのです。独立を控えたこの時期に、私の投資に対する考え方は大きく変わりました。
会社員時代は毎月決まった給料が入ってくるため、株価が下落しても「給料があるから大丈夫」と思えました。しかし、独立後は収入が不安定になります。事業が軌道に乗るまでの間、投資からの収入が生活の支えになる可能性もあります。そう考えた時、株価の値上がりを期待するだけの投資では心許ないと感じるようになりました。
「毎月一定額の配当が入ってくれば、収入が不安定な月があっても精神的に楽になるのではないか」そんな思いから、私は本格的に配当投資にシフトすることを決めました。2017年の秋頃から、保有していた成長株を少しずつ売却し、その資金で高配当アメリカ株を買い増していきました。
独立・起業で痛感したキャッシュフローの重要性
2018年1月、私は正式に独立しました。婚活・ライフスタイル系メディア「konkatsu.online」の運営を開始し、同時に医療関係のコンサルティング業務も継続していました。独立当初の数か月は、想像以上に厳しい現実が待っていました。
会社員時代は毎月25日に給料が振り込まれるのが当たり前でした。ところが独立すると、収入は完全に自分次第になります。良い月もあれば、ほとんど収入がない月もありました。特に独立後3か月目の2018年4月は、売上が予想を大幅に下回り、月の収入が12万円程度しかありませんでした。家賃や生活費を考えると、明らかに赤字でした。
そんな時、配当収入の存在がどれだけ心強かったか。当時の私のポートフォリオからは、月平均で約8万円の配当が入ってきていました。年間にすると100万円程度です。この8万円があるのとないのとでは、精神的な余裕が全く違いました。「最悪の場合でも、配当収入があるから数か月は持ちこたえられる」という安心感が、独立への不安を和らげてくれたのです。
この経験を通じて、私はキャッシュフローの重要性を痛感しました。株価が1年で50%上がったとしても、それを売却しなければ現金にはなりません。しかし配当は違います。保有し続けている限り、定期的に現金が入ってきます。独立・起業という不安定な状況下では、この違いは想像以上に大きいものでした。
2018年の後半になると、事業も少しずつ安定してきました。メディアの収益化も進み、コンサルティング業務のクライアントも増えてきました。それでも、配当投資の重要性は変わりませんでした。むしろ、事業からのキャッシュフローと配当からのキャッシュフローという2本柱があることで、より積極的な事業展開ができるようになりました。
例えば、新しい企画に投資する時も「失敗しても配当収入があるから大丈夫」という安心感が、リスクを取る勇気を与えてくれました。実際、2019年には少し冒険的なメディア企画に50万円を投資しましたが、結果的にそれが大きな収益源になりました。もし配当収入がなかったら、そのような投資はできなかった可能性があります。
この頃から、私の投資スタイルは完全に配当重視に変わりました。新たに購入する銘柄は全て配当利回り3%以上、できれば4%以上のものに限定しました。株価の値上がりも歓迎しますが、それは副次的なものです。最も重視するのは、持続可能で成長性のある配当です。
独立から2年が経った2026年、新型コロナウイルスの感染拡大が始まりました。多くの事業者が苦境に立たされる中、私のビジネスも影響を受けました。特にコンサルティング業務は、クライアントの予算削減により契約が相次いでキャンセルされました。2026年4月の売上は、前年同月比で60%も減少しました。
しかし、この時も配当収入が精神的な支えになりました。事業収入が不安定な中でも、毎月コンスタントに配当が入ってくることで、パニックに陥らずに済みました。「とりあえず生活は維持できる」という安心感があったからこそ、長期的な視点でビジネス戦略を練り直すことができたのです。
VYMからコカ・コーラまで、実際に購入した銘柄と配当の実感
私が本格的に高配当アメリカ株投資を始めてから、様々な銘柄を購入してきました。その中でも特に印象深い銘柄と、実際に受け取った配当の体験をお話ししたいと思います。
最初に大きく投資したのはVYM(バンガード・ハイディビデンド・イールドETF)でした。2018年の春頃、200万円分を購入しました。個別株選びに自信がなかった私にとって、分散投資ができるETFは魅力的でした。VYMは約400社のアメリカ高配当株に分散投資しているため、「これを買っておけば間違いない」という安心感がありました。
初回の配当が入金された時の感動は忘れられません。3か月後、約15,000円の配当金が証券口座に入金されていました。年利換算で約3%の計算です。決して高い利回りではありませんが、200万円を銀行に預けても年間数千円しか利息が付かない時代に、3万円以上の配当が期待できるのは驚異的でした。
次に手を出したのがHDV(iシェアーズ・コア・ハイディビデンド・ETF)です。VYMよりも利回りが高く、当時は3.5%程度ありました。2018年の夏に150万円分を購入しました。HDVの魅力は、財務体質の優良な大型株を厳選していることです。保有銘柄にはエクソン・モービル、AT&T、ベライゾンなど、聞いたことのある大企業が並んでいました。
SPYDも同時期に購入しました。これは配当利回りが4%を超えており、当時の私には非常に魅力的に映りました。100万円分を購入し、四半期ごとに約1万円の配当を受け取るようになりました。ただし、SPYDはREITの比重が高く、後に株価の変動が大きいことを実感することになります。
2019年になると、個別株にも興味を持つようになりました。最初に購入したのはコカ・コーラです。50年以上連続増配という記録に魅力を感じ、80万円分を購入しました。株価は1株50ドル程度でしたので、約1,600株の保有でした。
コカ・コーラから初めて配当を受け取った時は、何か特別な気持ちになりました。世界中で愛され続けているあのコーラの会社から、株主として配当をもらっている。そんな実感が湧いてきたのです。四半期配当は約200ドル、日本円で約2万円でした。年間では8万円程度の配当です。
P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)も同様の理由で購入しました。こちらは60年以上の連続増配記録を持つ生活必需品メーカーです。70万円分を購入し、四半期ごとに約1万5千円の配当を受け取るようになりました。P&Gの商品は我が家でも使っているシャンプーや洗剤などがあり、「自分が使っている商品の会社から配当をもらう」という実感が持てました。
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、ヘルスケア分野での安定性に魅力を感じて購入しました。60万円分を投資し、年間約2万円の配当を受け取っています。医療コンサルタントとして働いていた経験から、ヘルスケア分野の成長性と安定性を理解していたため、安心して投資できました。
これらの銘柄から得られる配当の合計は、月平均で約12万円、年間では約150万円になります。独立当初と比べて投資額も増えたため、配当収入も大幅に増加しました。この150万円という金額は、私の生活費の約半分をカバーしています。
配当を受け取る度に感じるのは、「働かなくてもお金が入ってくる」という不思議な感覚です。もちろん、投資にはリスクが伴いますし、元本が減る可能性もあります。しかし、優良な企業の株を長期保有することで、安定した配当収入を得られるというのは、会社員時代には味わえなかった感覚です。
特に印象的なのは、配当金の使い道を考える楽しさです。月12万円の配当があれば、それを再投資に回すこともできますし、生活費の足しにすることもできます。時には配当金で家族と良いレストランで食事をしたり、小旅行に行ったりすることもあります。「コカ・コーラからの配当で今日の夕食代を払った」と考えると、なぜか食事がより美味しく感じられるのです。
思ったほど甘くなかった高配当株投資の現実
高配当株投資を始めて数年が経ち、最初に抱いていた楽観的な期待と現実との間には、いくつものギャップがあることを痛感しました。「配当さえもらえれば安心」という単純な考えでは、決してうまくいかないというのが正直な感想です。
最初の大きな現実を知ったのは、2020年のコロナショックの時でした。私が保有していたSPYDは、3月だけで40%近く下落しました。高配当株は安定しているという思い込みが、見事に打ち砕かれた瞬間でした。特にSPYDに含まれる不動産投資信託(REIT)や金融株が大きく売られ、ETF全体の価格も大幅に下落しました。
さらに深刻だったのは、配当カットの連鎖でした。私が個別に保有していたエネルギー関連株の一つは、コロナ禍での原油価格暴落を受けて、配当を半分以下に削減しました。それまで四半期ごとに2万円程度受け取っていた配当が、8千円まで減額されたのです。「高配当株なら安定した配当がもらえる」という甘い考えが、いかに危険だったかを思い知らされました。
AT&Tも私にとって苦い経験となりました。2019年に購入した時の配当利回りは6%を超えており、「これは掘り出し物だ」と思っていました。しかし、その後の業績悪化により、2021年に配当が大幅にカットされました。利回りの高さには必ず理由があるということを、身をもって学びました。
税務面での複雑さも、予想以上に面倒でした。アメリカ株の配当には、まずアメリカで10%の源泉徴収が行われ、その後日本でも約20%の税金がかかります。確定申告で外国税額控除の手続きをすれば一部は還付されますが、毎年の手続きは思った以上に煩雑でした。特に複数の銘柄を保有していると、配当の計算や税額の計算が複雑になり、税理士に相談する必要も出てきました。
為替リスクも軽視していた要因の一つでした。2022年になって円安が急激に進んだ時、ドル建ての配当収入は増えましたが、同時に追加投資のコストも大幅に上昇しました。1ドル110円の時代に立てていた投資計画が、1ドル140円になると全く成り立たなくなってしまいました。為替の変動が投資戦略に与える影響を、もっと真剣に考えるべきでした。
また、配当収入に依存する心理的な危険性も実感しました。毎月安定して配当が入ってくることに慣れてしまうと、どうしても生活水準がその収入に合わせて上がってしまいます。月12万円の配当があることを前提に生活設計をしていると、万が一配当が減額された時の生活への影響が深刻になります。実際、2020年に一部銘柄の配当がカットされた時は、生活費の見直しを迫られました。
投資判断の難しさも想像以上でした。高配当株と言っても、その配当が持続可能なのか、企業の財務状況は健全なのか、将来的な成長性はあるのかといった分析が必要です。単純に利回りの高さだけで銘柄を選んでいた初期の頃は、失敗も多くありました。企業の決算書を読み込み、業界動向を分析し、競合他社との比較をする作業は、想像以上に時間と労力が必要でした。
配当投資特有のジレンマもありました。配当利回りの高い銘柄ほど、一般的に株価の成長性は限定的です。つまり、配当はもらえるが、資産全体の成長は期待できないということです。実際、私のポートフォリオの中には、5年間配当をもらい続けているにも関わらず、株価は購入時とほぼ変わらない銘柄がいくつもあります。インフレを考慮すると、実質的な価値は目減りしているとも言えます。
さらに、配当投資は意外に感情的な要素が大きいことも発見でした。四半期ごとの配当発表の度に一喜一憂し、減配のニュースには過度に反応してしまいます。「安定した投資手法」と考えていたのに、実際には株価の変動以上に配当の変動に神経を使うことが多くなりました。
5年経った今だから語れる、配当投資の本当のメリット
高配当株投資を始めてから約5年が経った今、当初の期待と現実のギャップを受け入れた上で、それでも配当投資を続けている理由があります。確かに思ったほど甘くはありませんでしたが、得られたものも確実にあったからです。
最も大きなメリットは、やはり精神的な安定感でした。独立・起業という不安定な状況の中で、毎月一定の配当収入があることの心理的効果は計り知れません。事業が不調な月でも「配当があるから大丈夫」という安心感が、長期的な視点でビジネスを運営する余裕を与えてくれました。これは株価の値上がりを期待するだけの投資では得られない安心感です。
また、配当投資を通じて企業分析のスキルが格段に向上しました。持続可能な配当を見極めるためには、企業の財務状況、キャッシュフロー、業界での競争力など、様々な要素を総合的に判断する必要があります。この分析能力は、本業のコンサルティング業務にも活かされており、クライアントに対してより的確なアドバイスができるようになりました。
配当再投資による複利効果も実感し始めています。毎月受け取る配当の一部を新たな株式購入に充てることで、保有株数が徐々に増加し、それに伴って次期の配当額も増えるという好循環が生まれています。この効果は時間が経つにつれて加速度的に大きくなることを、実際の数字で確認できています。
税務面での知識も大幅に向上しました。外国税額控除の仕組みや、配当所得の申告方法など、以前は全く知らなかった税務知識を習得することができました。これにより、合法的に税負担を軽減する方法も学び、手取りの配当収入を最大化することができています。
意外な副産物として、世界経済や企業経営に対する理解が深まりました。配当を出す企業の多くは成熟した大企業であり、世界経済の動向に敏感に反応します。これらの企業の業績や配当政策を追うことで、自然と世界経済の流れを把握できるようになりました。この知見は、メディア運営においても有益な記事作成に役立っています。
現在の私のポートフォリオからは、年間約200万円の配当収入を得ています。これは独立当初の約2倍の水準です。この金額があることで、新しいビジネスチャンスにより積極的に取り組むことができています。「失敗しても配当収入があるから生活は維持できる」という安心感が、リスクを取る勇気を与えてくれるのです。
配当投資のもう一つのメリットは、投資に対する長期的な視点を養えることです。四半期ごとの配当を楽しみにしていると、短期的な株価の変動に一喜一憂することが少なくなります。「今期の配当はどうなるか」「来年の増配は期待できるか」といった中長期的な視点で企業を見るようになり、より安定した投資判断ができるようになりました。
また、配当投資は「投資していることを実感できる」という点も魅力です。株価の値上がりは売却するまで利益にはなりませんが、配当は確実に現金として受け取れます。この「実際に手に入る利益」という実感が、投資を続けるモチベーションになっています。
グロース株も捨てきれない理由と現在のポートフォリオバランス
高配当株投資の魅力を語ってきましたが、実は私は完全にグロース株を手放したわけではありません。現在のポートフォリオでは、約70%を高配当株、残り30%をグロース株で構成しています。この配分にした理由と、グロース株を保有し続ける理由について説明したいと思います。
まず、インフレに対するヘッジという観点があります。高配当株の多くは成熟した企業であり、大幅な成長は期待できません。一方で、インフレが進行すると、固定的な配当収入の実質的な価値は目減りしてしまいます。この問題を解決するためには、インフレを上回る成長が期待できるグロース株を一定程度保有する必要があると考えています。
実際、2021年から2022年にかけてのインフレ局面では、この判断の正しさを実感しました。高配当株の株価は低迷していましたが、保有していたテクノロジー関連のグロース株が大きく値上がりし、ポートフォリオ全体のパフォーマンスを支えてくれました。配当株だけでは、このような相場環境に対応するのは困難だったでしょう。
現在保有しているグロース株の中心は、やはりテクノロジー関連です。マイクロソフト、アップル、アマゾンなどの大型テック株に加えて、クラウドコンピューティングやAI関連の成長企業にも投資しています。これらの企業は配当利回りは低いものの、長期的な成長性は高配当株を大きく上回ると期待しています。
グロース株投資で最も重要なのは、タイミングです。高配当株は比較的いつ買っても大きな失敗は少ないのですが、グロース株は購入タイミングによって結果が大きく変わります。この点は、長年の投資経験が活かされていると感じています。ITバブル崩壊やリーマンショックを経験した今の私は、20代の頃のように無闇にグロース株に飛び付くことはありません。
具体的には、相場が大きく下落した時や、優良企業の株価が一時的な要因で売られた時にだけ、グロース株を購入するようにしています。例えば、2020年のコロナショック時には、アマゾンやマイクロソフトの株価が一時的に下落した際に追加購入しました。その結果、その後の株価回復で大きな利益を得ることができました。
また、グロース株投資は私にとって投資の楽しみを維持する役割も果たしています。配当株投資は安定している反面、ややもすると退屈に感じることがあります。四半期ごとに配当をもらうだけで、株価の変動にはあまり関心を払わなくなってしまいます。しかし、グロース株があることで、企業の成長ストーリーを追ったり、新しい技術トレンドを研究したりする楽しみを保つことができています。
リスク分散の観点でも、グロース株の存在は重要です。高配当株は景気敏感株や金融株の比率が高く、特定の経済環境下では大きく下落する可能性があります。一方、テクノロジー系のグロース株は、経済環境とは別の要因で動くことが多いため、ポートフォリオ全体のリスク分散につながっています。
現在の配分(高配当株70%、グロース株30%)は、試行錯誤の結果たどり着いた比率です。以前は高配当株の比率をもっと高くしていたのですが、2021年のテクノロジー株の大幅上昇を受けて、グロース株の比率を若干高めました。この配分により、安定した配当収入を確保しながら、長期的な資産成長も期待できるバランスの取れたポートフォリオが構築できていると感じています。
ただし、この配分は固定的なものではありません。相場環境や自分の生活状況の変化に応じて、適宜調整していく予定です。例えば、もし今後事業が大きく成長して配当収入への依存度が下がれば、グロース株の比率を高める可能性もあります。逆に、もっと安定志向になれば、高配当株の比率をさらに高めるの可能性があります。
25年以上の投資経験を通じて学んだ最も重要なことは、完璧な投資手法は存在しないということです。高配当株にもグロース株にも、それぞれメリットとデメリットがあります。重要なのは、自分の置かれた状況や目標に応じて、適切なバランスを見つけることだと思います。私にとって現在のポートフォリオは、安定性と成長性を両立させる最適解なのです。


