19歳から25年以上投資を続けてきた私が、なぜハイテク株一辺倒から高配当アメリカ株にシフトしたのか。その背景には独立・起業という人生の転換点があります。収入が不安定になった時、配当というキャッシュフローの威力を実感したのです。今回は投資スタイルを変えた正直な理由と、実際に体験した結果をお話しします。
19歳でハイテク株に夢中になった理由
2001年、私は19歳でした。当時はITバブルの真っ只中で、インターネット関連企業の株価が連日ストップ高を記録していたんです。大学生だった私は、バイト代を貯めて初めて証券口座を開設しました。
最初に買った株は、今思えば笑ってしまうのですが、光通信でした。当時は株価が20万円を超えていて、とても手が出せませんでしたが、ミニ株で購入したんです。1株2万円くらいで買って、翌日には2万5千円になっていました。たった一日で5千円も儲かったことに興奮して、完全にハイテク株の虜になってしまったんです。
その後も、ソフトバンク、ヤフー、楽天など、当時のIT企業を次々と購入していきました。バイト代の大部分を投資に回していたので、友達との飲み会を断ることも多かったですね。「株で儲けて、将来は早期リタイアするんだ」なんて本気で思っていました。
当時の私にとって、配当なんてどうでもよかったんです。年2%や3%の配当なんて、ハイテク株の値上がりに比べたら雀の涙でした。実際、光通信は半年で3倍近くになりましたからね。配当株なんて「おじいさんが買う株」だと思っていました。
ITバブル崩壊で味わった絶望感
しかし、2001年の春頃から風向きが変わり始めました。アメリカのナスダックが暴落し始めたんです。最初は「一時的な調整だろう」と楽観視していました。ところが、下落は止まりませんでした。
光通信の株価は20万円から5万円まで下がりました。私が買ったミニ株も、2万円が5千円になってしまったんです。他のハイテク株も軒並み暴落しました。ソフトバンクは8000円から1000円台まで下がりましたし、楽天も半分以下になりました。
一番ショックだったのは、投資を始めて1年ちょっとで、バイト代を2年分近く失ったことです。当時の私にとって100万円近い損失は本当に痛かったです。親にお金を借りようかとも思いましたが、投資のことは内緒にしていたので言い出せませんでした。
でも、若かったからでしょうか、「いつかは上がるだろう」と思って持ち続けました。結果的にこれが良かったのかもしれません。ソフトバンクは10年後に元の水準まで戻りましたし、楽天も復活しました。ただし、光通信は二度と元の水準には戻りませんでしたが。
この経験で学んだのは、どんなに有望に見える企業でも、株価は大きく下がることがあるということでした。でも、まだ若かった私は「次はもっとうまくやろう」と思うだけで、投資スタイルを変えようとは思いませんでした。
リーマンショックで投資観が変わり始めた
2008年、私は26歳になっていました。不動産営業の仕事を始めて3年目で、給料も安定していたので投資金額も増やしていました。ITバブル崩壊の痛手から立ち直って、再びハイテク株中心のポートフォリオを組んでいたんです。
アップル、グーグル、アマゾンなど、アメリカのハイテク株にも手を出すようになっていました。アップルはiPhoneを発売したばかりで、株価も右肩上がりでした。「今度こそ大きく儲けるぞ」と意気込んでいた矢先に、リーマンショックが起こったんです。
今度の下落は、ITバブル崩壊よりもひどいものでした。アップルは200ドルから80ドルまで下がりましたし、グーグルも700ドルから250ドルまで暴落しました。日本のハイテク株も軒並み半値以下になりました。
この時は、さすがに心が折れそうになりました。投資を始めて7年経っても、結局は大きな損失を抱えている状況でした。「もう投資なんてやめようか」と本気で考えました。
でも、このとき初めて配当の存在を意識したんです。ポートフォリオの中に、たまたま買っていたAT&Tという通信会社がありました。株価は下がっていましたが、年4%近い配当を出し続けていたんです。100万円分持っていれば、年間4万円の配当がもらえる計算でした。
「株価が下がっても、配当があれば多少は心の支えになるな」と思ったのが、高配当株に興味を持ったきっかけでした。ただし、この時点ではまだメインはハイテク株のままでした。
30代後半、ライフスタイルの変化が投資観に影響した
30代後半になると、人生に対する考え方が変わってきました。M&A業界に転職し、その後医療コンサルタントとして働くようになって、収入は増えましたが、同時に将来への不安も大きくなったんです。
特に、結婚を意識するようになってから、「ハイテク株だけで大丈夫なのか」と考えるようになりました。結婚すれば家族を養わなければならないし、住宅ローンも組む必要があります。そんな時に株価が暴落したら、精神的にも経済的にも大きなダメージを受けてしまいます。
また、この頃から「お金を増やす」ことより「お金を守る」ことの重要性を感じるようになりました。20代の頃は、多少損をしても時間があるから取り戻せると思っていました。でも、30代後半になると、大きな損失を出してから回復するまでの時間を考えると、リスクを取りすぎるのは危険だと感じるようになったんです。
そんな時に読んだ投資本の中で、「配当成長株」という考え方に出会いました。コカ・コーラやジョンソン・エンド・ジョンソンのように、長期間にわたって配当を増やし続けている企業があることを知ったんです。
コカ・コーラは50年以上連続で配当を増やしており、ジョンソン・エンド・ジョンソンも50年以上配当を増やし続けています。こういう企業なら、株価が下がっても配当で心の支えになるし、長期的には配当も増えていくので、インフレにも対応できると思ったんです。
実際に、2015年頃からポートフォリオの一部を高配当株に振り向けるようになりました。最初はコカ・コーラを100株、ジョンソン・エンド・ジョンソンを50株ほど購入しました。年間の配当は1万円程度でしたが、3ヶ月に1回、確実に配当が入金されるのを見ていると、不思議と安心感がありました。
独立・起業で収入が不安定になり、配当の重要性を実感
2018年、私は41歳で独立・起業を決意しました。婚活・ライフスタイル系のメディア事業を立ち上げたんです。会社員時代とは違って、毎月決まった給料が入ってくるわけではありません。月によって収入に大きなばらつきがありました。
独立して最初の半年間は、本当に厳しい状況でした。メディアの収益化には時間がかかるし、貯金を切り崩しながら生活していました。そんな時に、配当の存在がどれほど心の支えになったかは言葉では表現できません。
当時、私のポートフォリオからは年間約50万円の配当が入ってきていました。月割りにすると約4万円です。生活費のすべてを賄えるわけではありませんが、光熱費や通信費くらいは配当で支払えました。「最悪の場合でも、配当があるから当面は生活できる」と思えることで、事業に集中できたんです。
この体験から、収入が不安定な人にとって配当がいかに重要かを痛感しました。会社員時代は「配当なんて微々たる金額」と思っていましたが、収入が不安定になると、その安定したキャッシュフローの価値が本当によくわかります。
そこで、思い切ってポートフォリオの大部分を高配当株にシフトすることにしました。ハイテク株の一部を売却して、VYM、HDV、SPYDなどの高配当ETFを購入しました。また、個別株としてはP&G、AT&T、ベライゾンなども追加しました。
VYMは年3%程度の配当利回りで、アメリカの高配当株400社以上に分散投資できるETFです。HDVは年3.5%程度の配当利回りで、財務の健全性が高い約75社に投資しています。SPYDは年4%以上の配当利回りで、S&P500の中でも特に配当利回りの高い80社に投資しています。
これらのETFを組み合わせることで、年間4%程度の配当を安定的に得られるようになりました。1000万円投資していれば、年間40万円の配当になります。月割りにすると約3万3千円です。これだけあれば、最低限の生活は維持できると思いました。
実際に買った銘柄と配当の実感
高配当株にシフトしてから3年ほど経った現在、私のポートフォリオは以下のような構成になっています。
VYMには約400万円投資しており、年間約12万円の配当を受け取っています。3ヶ月に1回、約3万円ずつ入金されます。HDVには約300万円投資しており、年間約10万円の配当です。SPYDには約200万円投資しており、年間約8万円の配当を得ています。
個別株では、コカ・コーラに約200万円投資しており、年間約6万円の配当があります。P&Gには約150万円投資しており、年間約4万円の配当です。ジョンソン・エンド・ジョンソンには約100万円投資しており、年間約3万円の配当を受け取っています。
合計すると、年間約43万円の配当収入があります。月割りにすると約3万6千円です。この金額は、私の生活費の約3分の1に相当します。携帯電話代、インターネット代、電気代、ガス代などの固定費はほぼ配当で賄えている計算です。
配当が入金される時の安心感は、実際に体験してみないとわからないものです。事業の調子が悪くて収入が少ない月でも、「来月は配当が入るから大丈夫」と思えるのは本当に心強いです。
特に印象に残っているのは、2020年のコロナ禍での体験です。メディア事業も大きな影響を受けて、収入が半分以下になった月がありました。その時も、配当は予定通り入金されました。コカ・コーラもP&Gも、コロナ禍でも配当を維持してくれたんです。
「世界的な危機が起こっても、この企業たちは配当を出し続けてくれるんだ」と思うと、改めて高配当株の安定性を実感しました。もしハイテク株だけのポートフォリオだったら、株価の乱高下にやきもきして、事業に集中できなかったかもしれません。
また、配当の再投資効果も実感しています。受け取った配当で追加投資をすることで、翌年の配当額が増えるんです。複利効果というやつですが、これが想像以上に大きいことがわかりました。
例えば、VYMから受け取った配当3万円で追加購入すれば、翌年はその分の配当も上乗せされます。年4%の配当なら、3万円の投資に対して年1200円の配当が追加される計算です。小さな金額ですが、これが積み重なっていくと大きな差になります。
高配当株のデメリット・思ったほど甘くなかった部分
高配当株に投資してから数年経って、良い面だけでなく、思わぬデメリットも経験しました。最初に直面したのは、税金の問題です。
アメリカ株の配当には、まず現地で10%の税金が引かれ、さらに日本で約20%の税金がかかります。実質的な税負担は約28%になります。年間40万円の配当があっても、手取りは約29万円程度になってしまうんです。
確定申告で外国税額控除を申請すれば多少は取り戻せますが、手続きが面倒ですし、完全に二重課税が解消されるわけでもありません。ハイテク株の値上がり益なら、売却するまで税金はかからないので、この点はハイテク株の方が有利だと感じました。
もう一つのデメリットは、インフレに対する不安です。最近、アメリカでインフレが加速していますが、配当の伸びがインフレに追いつかない可能性があります。コカ・コーラやP&Gは長期的には配当を増やしていますが、年5%や10%のペースで増やしてくれるわけではありません。
実際、2021年から2022年にかけて、アメリカのインフレ率が7%を超えた時期がありました。配当の伸びが3%程度だとすると、実質的な購買力は下がってしまいます。長期的にはインフレに勝てるかもしれませんが、短中期的には不安になることがありました。
また、高配当株は株価の成長が期待できないという問題もあります。この3年間で、VYMの株価上昇率は年平均で約5%程度でした。一方、ハイテク株中心のQQQは年平均で15%以上上昇していました。配当を含めても、トータルリターンではハイテク株に劣っていたのは事実です。
特に、2020年から2021年にかけてのハイテク株バブルの時期は、「やっぱりハイテク株の方が良かったのかな」と思うこともありました。テスラやエヌビディアなどは数倍になっていましたし、アップルやマイクロソフトも大きく上昇していました。
友人の中には、「高配当株なんて時代遅れだよ。これからはハイテク株の時代だ」と言う人もいました。確かに、短期的なリターンだけを見れば、その通りだったかもしれません。
さらに、高配当株の中でも、期待外れだった銘柄がありました。AT&Tは高い配当利回りに魅力を感じて購入しましたが、2021年に減配を発表しました。配当利回り7%という魅力的な水準でしたが、結果的に株価も下がり、配当も減ってしまったんです。
この経験から、単純に配当利回りが高いだけでは安全ではないということを学びました。企業の財務状況や事業の将来性をしっかり分析しなければ、高配当株でも失敗することがあるんです。
乗り換えて数年経った今の正直な感想
高配当株にシフトしてから約4年経った現在、率直に言って「正解だった」と思っています。確かに、短期的なリターンではハイテク株に劣る部分もありました。しかし、精神的な安定感や生活の質の向上を考えると、間違いなくプラスでした。
一番大きな変化は、株価を毎日チェックする習慣がなくなったことです。ハイテク株中心だった頃は、朝起きて最初にやることは株価チェックでした。仕事中もスマホで株価を確認し、夜寝る前にもアフターマーケットの動きを見ていました。
今は、3ヶ月に1回配当が入金される時に口座を確認するくらいです。株価が多少下がっても「配当があるから大丈夫」と思えるし、上がっても「ボーナスみたいなものかな」程度の感覚です。この精神的な余裕は、事業運営にも良い影響を与えていると思います。
メディア事業は軌道に乗ってきましたが、それでも月によって収入の波があります。そんな時でも、配当という安定したキャッシュフローがあることで、長期的な視点で事業戦略を考えられるようになりました。目先の収益を追わなくても、配当があるから余裕を持って取り組めるんです。
また、配当の成長も実感しています。コカ・コーラは毎年少しずつですが配当を増やしてくれていますし、P&Gも同様です。VYMやHDVの分配金も、年によって波はありますが、長期的には増加傾向にあります。
2019年に年間30万円だった配当収入が、現在は43万円になっています。これは追加投資の効果もありますが、配当の成長と再投資の複利効果も寄与しています。このペースが続けば、10年後には年間70万円、20年後には年間100万円を超える可能性もあります。
老後のことを考えても、高配当株の方が安心感があります。65歳になった時に、年間100万円の配当があれば、年金と合わせて最低限の生活は維持できます。ハイテク株の場合、売却しなければキャッシュフローは得られませんが、高配当株なら保有しているだけで収入が得られます。
投資家としても成長できたと感じています。ハイテク株に投資していた頃は、短期的な株価の動きに一喜一憂していました。今は、企業の本質的な価値や長期的な競争力を重視するようになりました。四半期決算の数字より、10年後も安定した事業を継続できるかどうかを考えるようになったんです。
もちろん、完璧な投資戦略だとは思っていません。市場環境が大きく変われば、また投資スタイルを見直す必要があるかもしれません。でも、現在の私のライフスタイルや価値観には、高配当株投資がよく合っていると感じています。
ハイテク株を完全にやめたわけではない理由
高配当株にシフトしたとはいえ、ハイテク株を完全にやめたわけではありません。ポートフォリオの約20%は、今でもハイテク株に投資しています。その理由は、長期的な成長性を完全に諦めたくないからです。
アップル、マイクロソフト、グーグルなどの優良ハイテク企業は、今後も世界経済の成長を牽引していく可能性が高いと思います。AI、クラウド、電気自動車など、次世代の技術革新はほぼ間違いなくハイテク企業が中心になります。
また、これらの企業も配当を出すようになってきました。アップルは2012年から配当を復活させ、現在は年0.7%程度の配当利回りがあります。マイクロソフトも年0.8%程度の配当を出しています。配当利回りは高くありませんが、配当の成長率は高配当株を上回っています。
実際、アップルの配当は過去10年で4倍以上に成長しています。マイクロソフトも同様です。株価の成長に加えて配当も増えているので、長期的なトータルリターンは非常に魅力的です。
現在保有しているハイテク株は、アップル、マイクロソフト、アルファベット(グーグル)、アマゾンの4社です。合計で約500万円投資しており、ポートフォリオ全体の約20%に相当します。これらの企業は、高配当株とは異なる魅力があると思っています。
アップルは言うまでもなく、iPhone、iPad、Macなどで世界中の消費者に愛される製品を提供しています。サービス事業も成長しており、App Store、Apple Music、iCloudなどの継続的な収益源があります。私自身もApple製品のヘビーユーザーなので、この企業の成長を信じています。
マイクロソフトは、クラウド事業のAzureが急成長しており、企業向けのソフトウェアでも圧倒的な地位を築いています。Windowsは今でも世界のPCの約90%に搭載されていますし、Officeも多くの企業で使われています。
これらのハイテク株は、高配当株とは異なるリスク・リターン特性を持っています。短期的には株価の変動が大きいですが、長期的な成長性は高配当株を上回る可能性があります。ポートフォリオの一部をハイテク株にすることで、全体のバランスが取れていると思います。
また、年齢的なことも考慮しています。現在44歳の私は、あと20年以上投資を続ける予定です。その間に、まったく予想できない技術革新や社会変化が起こるかもしれません。そんな時に、成長性の高いハイテク株を保有していることで、変化に対応できると思っています。
ただし、以前のようにハイテク株一辺倒になることはありません。ポートフォリオの大部分は高配当株で安定性を確保し、一部をハイテク株で成長性を追求するというバランスを維持していくつもりです。
投資において大切なのは、自分のライフスタイルやリスク許容度に合った戦略を選ぶことだと思います。20代の頃はハイテク株一辺倒でも良かったかもしれませんが、40代になった今は、安定性と成長性のバランスが重要だと考えています。高配当株とハイテク株を組み合わせることで、そのバランスを実現できていると感じています。
これからも市場環境や自分の状況に合わせて、投資スタイルを微調整していくつもりです。でも、高配当株を中心とした現在のスタイルは、当分続けていく予定です。配当というキャッシュフローの安心感を一度味わってしまうと、もう手放せません。25年間投資を続けてきて、ようやく自分に合ったスタイルを見つけられたのかもしれませんね。


